世代をつなぐ家

世代をつなぐ家

のどかな景色が広がる敷地に建つご実家を二世帯住宅に建て替えた住まいです。

流行り廃りのない調和のとれた和風建築が好きなご夫婦。一方で由緒ある本家という風格をというご両親の思いも融合し、落ち着きのある中にも重みが感じられる外観に仕上げています。

それぞれが気兼ねなく過ごせるよう浴室のみ共有の二世帯住宅とし、玄関は二つ設けていますが、土間を介してつなげ、お互いのプライバシーを確保しつつも一つ屋根の下で暮らす安心感を実現しました。

一番の特徴は玄関~土間~和室~ダイニングキッチンへとつながる大空間。
土間に面した木製サッシを開け放てば外と繋がり、どこまでも抜ける景色と自然の風が通り抜ける心地よさは格別です。土間天井は和風建築によく用いられる化粧垂木風。無垢材を化粧で仕上げ、趣と木造の美しさを感じられる仕上げに。
和室は日常使いは勿論、客間としてもご親類が集まった時の大広間としても使用できるよう設計。勿論神棚、仏間、床の間も設け、本家としての役割、季節の行事も大切にしています。天井はあえて勾配天井として化粧梁、木組みの力強さ、ダイナミックさを感じらえる空間としました。

バックヤードの階段踏み板には以前の家で使用していたケヤキの材を再利用。古材をいかせるのは木造建築に特化している大工ならではの技術。また、ご家族が昔の家やその思い出が蘇るよう、そんな思いを受け継ぐことも建て替えでは大切にしていることです。

一方で奥様のご希望で「うる和紙」という新たな素材も使用。重厚感があり、絵画の様な雰囲気です。

2階は蔵をイメージし木組みの構造を表した空間に。
一部には籠り感のある特別な書斎を。掘りこたつ式になっており、床に直接腰かけて使えます。世帯を超えた家族で過ごすからこそ、プライバシーも大切な要素。そんな思いをデザインしています。

親御さん世帯は無垢の腰壁、砂漆喰、障子、畳が融合し落ち着いた、まさに和の旅館をイメージした空間に。寝室は船底天井で、無垢材が作り出す上質な雰囲気と落ち着きを融合しています。
また、将来を見越し、キッチン~和室~寝室~洗面、トイレとコンパクトに回遊できる動線、プランを計画しました。

少なくなりつつある複数世帯での暮らし。それでも世帯ごとの思いは勿論、プライバシーを確保しつつ、お互いの気配を感じながら何かあった時に安心して暮らせるのは二世帯住宅ならでは。物理的な家は勿論、家族という家を受け止め、世代をつないでいくという意味で、住宅が果たす役割はとても大切です。