09.
話し手:代表取締役 渡邊
木材についてのシリーズ第5弾として、乾燥低温の持つ木材本来の特性について、
木の色や匂い、靭性といった魅力をどのように生かすか、高温乾燥との違いについて詳しく伺いました。
低温乾燥された木を使って持ち味を生かすってことですが、結局その持ち味ってなんですか?
まずはやっぱり色、匂い、見た目。
匂い嗅いでみたら分かりますよ。「これ木の匂いですよね~」なんて酸っぱい匂い嗅いで言う人いますけど、それは酸化した匂いです。劣化、老化した匂いなんですよ。高温乾燥は木の持つ脂、精油成分っていいますけど、いわゆる大事な部分ですね。それも一緒に抜けてしまうので、ある意味では木を殺してるようなもんだよ。
人間だって100℃の所に入れられたら死んじゃうじゃない?艶が無くなって、油が無くなってパサパサになる。保湿されない砂漠の肌みたいな。
40℃の所に入れられても水と食料があれば生きていけるじゃないですか?死にはしないですよね。100℃では死にますよね。人間と一緒です。
木を乾燥させるってことは、本来は木に含まれている余分な水分だけ抜きたいんですよ。それを一気に高温乾燥してしまえば一緒に油分まで無くなって、木が本来持ってる特性が無くなる。色や匂い、見た目等ある意味感覚的、情緒的な特性もそうだけど、粘り、柔らかさなど構造的な特性も。木が本来持っている構造的な一番の特徴は靭性(じんせい)があることですから。鉄とかコンクリートに靭性、柔らかさはないじゃないですか。鉄は曲がりますけど、粘り、柔らかさは出ないですよね。
靭性=柔らかさ。要するに木っていうのは、何だろうな、強さに対して、強さで対抗するわけではなく、のらりくらり、うにょうにょと対抗するわけですよ。木を組んだところが、ちょっとぐにゅぐにゅと動いてお互いがめり込んだり引っ込んだりしながら。人間でいう関節ですね。力を逃がして外的な力(地震)に対抗するんですよ。土台や柱、梁、桁などそれぞれ接続している部分が、めり込んだり、横にずれたり、それを一定吸収できる力を持ってるんですよ。それが無くなってしまう。
木が割れるっていうのはそういう事ですから。動いているから割れるんです。高温乾燥は表面は割れないんです。でも表面が割れない代わりに、芯(木の中)が割れる。表面から見えない内部、芯が割れる。それが強い、強度があるかって言われたら...。でも低温乾燥の木の芯はまず割れない。そもそも木っていうのは自然に乾燥させると表面は割れるけど中の芯の部分までは割れないんです。一番大事な所ですよ。
さらに言うと手刻み、昔から伝わってきた継ぎ手は木の持っている靭性が生かせるって事なんです。そういう組み手になってるんですよ。そういう形に組むんです。基本的に中(芯)が割れてないことが大事なんです。互いの木の芯の部分で継ぎ手を担保している訳ですから、そこ(中、芯)が割れるってことは、継ぎ手でいったら致命的なんです。
だからもし手刻みでやるなら高温乾燥はNGなんだよね。もしどこかの会社さんで高温乾燥なのに「墨付け、手刻みです」っていったらもう矛盾でしかない。高温乾燥だったら下手に墨付け手刻みはやらない方が良いんです。
巷でよく言われる、というかもうこっちが主流になっているプレカットってありますよね。私からしたらなんかよくわからないんですけど、プレカットの場合、たくさん金物で補強するんです。信じられないぐらいの量。そのビスがまた長くて多い。おいおい木を蜂の巣にするのかよ、肉なんて残んないじゃん!って思う。役所や第三者の検査機関が「ここに金物つけて下さい」って言うんだけど、それは全て継ぎ手が信頼できないというところに元づいていて...。そもそもその継ぎ手がまた機械?がやりやすいような加工?になっている。ほんとは色々大事な部分があるんです。ちょっと難しい話だけど、この継ぎ手は大入れをどのぐらい確保すると耐力が確保できるとか、長さをどの程度にするとか、欠損をなくすためにどうするとか...。それが一律で決められてしまう。だから早いし安いし、均一、なんでしょうけど。私からしたら、そもそもちゃんと木を使って、適切な木の組み方、継ぎ手仕口ならそんな数の金物要らないんだけど、木の使い手がちゃんと学習して木を使いこなせるようにするのが筋、先じゃないのって思うんですけどね...。
結局プレカットに合わせて、木も均一、画一的な工業製品にされてしまうんだよね。木の持っている一番の特徴が失われて工業製品化する。正直そうなってしまったら「木材」っていうより「木質」っていうものでつくられた建築ですって言った方が良いと思うんだけど...。
因みに集成材は細かくした木材を接着剤でくっつけてますから割れるってことが無い。一定の工業製品になっているので、まだ集成材の方が潔良いのかな~。接着剤でくっつけてる訳ですから、簡単に剝れないように一定の強さを持っていますし。でも本来の意味での木ではないんですよね。見た目が木っぽいな~みたいな。
そういう意味では集成材も高温乾燥の木材も本来の意味での木ではないんですよ。だって木の持っている特徴、しかも他の素材にない固有の特徴がなくなっているわけだから、論理的にも木っぽい工業製品って言った方が正しいと思うけどな。
木材について part6.へ続きます
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今回はブレイクタイム・おまけの会です。語られるのは設計の本質や、住まいづくりにおけるプランの重要性について。建築の仕事はプランだけではない...。それでも「基本プラン」が住宅の未来を左右する大きな出発点であることに変わりはありません。「建築」という仕事の本質は何か?改めて語ります。
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「木材について part6.」では、自然乾燥や低温乾燥の木が持つ本来の特徴と、それを踏まえた建築の魅力について深掘りします。癖を見極め、動きを予測しながら家をつくる知恵や、木材に込められた文化と未来への代表の想いをお届けします。
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木材についてのシリーズ第5弾として、乾燥低温の持つ木材本来の特性について、木の色や匂い、靭性といった魅力をどのように生かすか、高温乾燥との違いについて詳しく伺いました。
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「木材について part4.」では、木材の選別に対する考え、特に低温乾燥機を使用して品質を保つ重要性や、材木屋さんのこと、個々の木材の「個性」を生かす思いを伺いました。
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「木材について part3.」では、無垢材と集成材の違いや、木材の工業製品化による特徴の変化について代表に伺いました。
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part2.では、国産材と外材の違いや価格変動、国産材不足の背景、木材資源の持続可能性や管理の重要性について代表が語ります。
05
今回は、木材についてです。材へのこだわりや、国産材を選ぶ理由、木の魅力、木への思いについて伺いました。
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大工についてpart4、今回で最終回です。最終回では、社長の大工職への思いを伺いました。
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大工さんに向いている人とはどんな方でしょうか?今回は、その適性や現代社会の中で求められる資質について伺います。
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前回、大工という仕事に求められるスキルや、社長が考える理想の大工像についてお話を伺いました。part2では昔と今の大工さんの違いに焦点を当ててお話を伺います。
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本物の木の家をつくる上で大工の腕や技術がいかに重要か...。代表が考える大工という職業について伺いました。