01.

大工について part1.

話し手:代表取締役 渡邊

本物の木の家をつくる上で大工の腕や技術がいかに重要か...。
代表が考える大工という職業について伺いました。

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社長の考える大工という職業とは?

あくまで私が思う大工さんってことで話しますけど...

ひと言でいえば、木造建築に関しては右に出るものがいない、ってことですよ。 分かりにくいか(笑)

まあ要するに木を使いこなせるってことですよね。それはもう木という素材に対する知識、見識が非常に高くて木を使いこなせる。木材を、何をどこにどう使うかっていう信頼できる「目」を持っていて、木という素材を建物という形に変えていく技術がある。当然安全性とか、構造的な部分に対する木造建築の知識もあって、素材、躯体の構造、それを組み合わせてつくり上げる技術そのものが練り上げられていて、この人に任せれば大丈夫、安心っていうこと。構造のことはもちろん、木のことも、組み合わせというかね、どうやってどう使うのかってことね。それができるのが私は本当の大工さんだと思いますし、そうであってほしいと思います。

プラス、それをね、仕事で言えば当然QCD(品質、予算、納期)が求められる。Qって品質の部分は今言ったようなことですけど、適切な時間内とか、予算も含めてやりきれるってこと。棟梁とかになれば、メンバー全体の差配(段取り)とかね。それは他の職人さんもそうだし、工程の進め方もそうだし、品質もそうですよね。それができるのが大工さんであり、さらに棟梁ってことですよ。

よく専門用語っていうかね、俗語ですけど「叩く」って言うんです。叩くのは得意とか。叩くっていうのは大工さんの作業のことを言います。文字通り玄翁で叩いてるっていうこともありますけど、作業全般のことを言うんですよ。「俺は現場で叩くことが好きなんだよな」ってのは、要するに現場で作業してることが好き、みたいなこと。

だけど、本当の棟梁とか大工さんは叩くだけじゃないですよね。さっきも言った差配するってことだし、材料をどういう風に使うかって考えるのもそうだし、それをどう組み合わせるとか、収まりとかの意匠は勿論構造もね。当然完成形があってそこから逆算して何をどうやったらいいかみたいな。つくるプロなわけだからさ

でもそれを本当にやろうと思ったらさ、木材のことはある意味当たり前で、それ以外の建築のことにも一定精通していないといけない。結局、家を建てようと思ったらね、いろんな職人さんとか業者さんが関わりますよね。電気屋さん、設備屋さん、左官やさん、建具屋さんといっぱいいる訳だから、その人たちとの協業も必要になりますよね。だから、大工さんがちゃんとしてる現場はやっぱりうまくいきますよ。それは段取りもだし、品質もです。大工さんが下手だとダメだね。だって大工さんが下手なのに、他の職人さんに綺麗にやってくれなんて通用しないじゃないですか。お前(大工)こんな仕事してんのになんで俺(他の職種の方)だけ綺麗にって求めるのよ、みたいなさ(笑)

昔からよく言いますよ。家は大工と基礎で決まるって。 もっと言えば基礎、大工、左官、建具。この4種ですよね。やっぱり4種がきちんとしてないとまともな家にはならないですよ。その中でもやっぱり躯体をつくる基礎と、大工さんがどれだけ腕がいいか。腕だけじゃなくてさっき言ったような全体の差配ができるかが重要だよね。

本来大工さんはそういう(作業の他に段取り、品質管理)仕事。そこにある素材、木材とか与えられたリソース、それは予算や工期も含めてね。人や場所、設計図は決まってますけど、その決まってる内容の中で、より綺麗に美しく見えるとか、よりお客さんに喜んでもらえるとか、そのためにはどういう素材の組み合わせや工程としたらいいだろうかっていうのを考えるのが実は大工さんの1番重要な仕事だと思うんですよ。そういう人はやっぱり叩くこともうまいですよ。「叩き上げ」ってそういう言葉ありますよね?当然叩き上げできてますし、やっぱり木のこととかいろんなことが身についてます。

ただね、とにかく「ちゃんとつくる」っていうのもすごく重要ですよ。だから、大工さんの役割としては、与えられた図面、仕様通りつくれるっていうだけでもそれは素晴らしい腕だと思います。

ダメっていうわけじゃなくて、ちょっと語弊があるけど、いわゆる差配するとか、料亭では一番上の人(責任者)を「包丁師」って言うらしいんですけど、仕入れから献立、素材の使い方まで考える方。そこまでできたら本当素晴らしいと思うけど、現場作業だけを担ったとしても素晴らしい仕上げに上げてくるのも、すごく立派な大工さんだし、大工さんとしては一人前だと思います。ただ、プラスアルファ棟梁とか、さらに上って言うと、その包丁師的な役割になれれば理想。そこまでの大工さんになってほしいっていうのが私の理想。大工さん全員が全員というのは個人の特性もあるので、現場で叩くだけの方が好きだとなればそれはそれだけどね。

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ただ、現場で叩くのだけが大工さんみたいな風潮があるんですよね~なんか...。現場で言われたことをやる。繰り返しになるけどそれが悪いわけではないです。でも私はそこにとどまらないで欲しいと思う。もっと上があるし、逆に言えば本来そのぐらいの能力を絶対大工さんは持ってるって私は思うんですよ。

だって昔は棟梁1人で全部差配して建てたんだから。棟梁ってそういう意味だからね。

今はいろんなこと分業になっちゃったからやらないだけで。でも私が定義する大工さんはやっぱり現場で差配から意匠、構造の品質管理までできる人であってほしいし、その可能性を持ってる人たちだと思うし。1番木のことを知ってるんだからね。だって毎日木に触ってるんですからね。肌で触れて、感じてね。本当にもうなんか体に染みついてるみたいな。

その人たちが木材をどう使うとか、どうすれば一番生きるとかやるのが一番理にかなってるし、逆に言えば当たり前だと思う。

素材や現場を肌感覚で知ってる人が一番いいのは当たり前ですよね。

ちょっと余談ですけどね、なんで昨日までピコピコ、ピコピコ、スマホしかいじってなかったような(笑、炎上する?)、こないだまで木にも触れたことのないような子が、大卒だから、建築士だからって突然木造建築の設計?施工管理とか??と思う。

それは違うでしょって、すごく思うんですよね。私が逆の立場だったら、なんでそんな子に指示されなきゃならないんだと思う。木造とか、木とか何も知らないじゃん、みたいな。こういうと「昭和だ」とか「だから若手が定着しない、成長しない」とか言われるだろうけど、そういう意味ではなくてね。木造の設計や施工管理するなら最低限見た目で杉、桧、松...など木材の違いは分かってほしいし、すぐに分からないのは仕方ないけどいつまでも分かろうとしないのに木造やりたいです、設計したいです、品質管理します、人様からお金頂きますって冗談じゃない。会社が指導教育すべきことでは?という意見もあるだろけどそれは違うと思う。全てお膳立てして与えてもらおうじゃなく、自ら学ぼう、学ぶという意識がないのでは話にならない。

逆に大工さんはその位のプライドを持ってやって欲しい。 学校ぽっと出の若いのに言われなくてもやるわみたいな。いいから黙って見てろ、みたいな。それぐらいのプライドはもって欲しい。そもそも本物の木に触れたこともない子が突然大工さんに指示?施工品質管理?木造設計?なんで?すごいジレンマとしてあります。

だから、木造を志すんだったらまずはそういう自覚を本人たちも持たなきゃいけないと思う。今は本物の木に直接触れる機会なんて自分でつくろうと思わない限りないわけで、自分たちは木のこと、木造を全く知らないんだってことを自覚しなきゃならない。それが最初の一歩。だから本当に勉強しなきゃならない。木造やりたいんだったら、木と寝るぐらいじゃないと。(笑) いや、でも冗談じゃないからね。