ヤマニの技術

No.08自社で大工を育てる理由。

分譲住宅、工業化住宅、フリープラン住宅と呼ばれる量産住宅の施工現場では、もはや大工すら必要としないほど合理化が進んでいます。これに対して、私たちが取り組むオーダーメイドの本格木造住宅は高度な技術力が要求されます。

一時代前の日本なら、建築様式はある程度決まっていて、デザインの幅も広くはありませんでした。しかし、情報があふれる現在では、お客様の目も肥え、インテリアからエクステリアまで、デザインへの要望が多岐にわたるようになりました。つまり、性能、品質だけでなく、この多様なニーズに対応できる知識や技術力も求められるのが実情です。

こうした状況に対応するべく、ヤマニ建設の注文住宅ブランド「WISE SCAPE」では、社員大工の養成にも積極的に取り組んでいます。ほとんどの住宅会社が社員として大工を雇わず、独立した大工に委託する現在、敢えて一から若い大工を教育しているのです。

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もちろん、数は減っているとは言え、独立した経験豊富な大工もまだいますし、私たちもまれに独立した大工に仕事を依頼する場合もあります。しかし、その経験豊富な大工でさえも、高い技術力を要求されるような本格的な注文住宅を施工する機会は滅多にありません。そうなると、せっかくの豊富な経験も、熟練の技術も使われることなく、次第に量産化、工業化住宅に慣れていってしまう。だから、「WISE SCAPE」は、本格的な注文住宅に特化した大工を、自社で養成しているのです。

一棟一棟、まったく別の設計、ディティールを表現しなければならない注文住宅の仕事は、「慣れ」だけでは施工できません。常に考え、工夫することが必要不可欠になります。若いうちから注文住宅の仕事に取り組むことで、その都度、自分で考え、工夫することが習慣化し、積極的な姿勢で経験と技術力を積んでいけるのです。

通常の新築注文住宅をはじめ、リノベーション、2世帯住宅、建替え、狭小地、店舗併用住宅、それぞれに異なるデザインへの要望を叶える注文住宅など、私たちが積極的に受注している仕事は、どれも高い大工技術を必要とする仕事ばかり。注文住宅の経験を積んだ大工が不可欠だからこそ、自分たちで育てる。需要と供給。ただ、それだけのシンプルな理由で、私たちは自社大工の育成を続けているのです。

NEXT→注文住宅に対応できる設計士とは。

  1. No.10
    私たちがめざす建築の仕事。
  2. No.09
    注文住宅に対応できる設計士とは。
  3. No.08
    自社で大工を育てる理由。
  4. No.07
    今、敢えて注文住宅に取り組む意味。
  5. No.06
    いい家を建てたくても建てられない消費者たち。
  6. No.05
    「空き家率の上昇」という工業化の「副作用」。
  7. No.04
    人口爆発、大工の増加と工業化を振り返る。
  8. No.03
    日本が迎えた、建築文化の危機。
  9. No.02
    日本が世界に誇る、建築文化の歴史。
  10. No.01
    【はじめに】建築業界の変化と、未来を読み解くために。